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327 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 09:43:25.56 ID:RNLP1A2SO
朝起きて、なんかさみぃと思ったら。
カーテンを開けたら広がる白い世界。
('A`)「雪、か」
ふわりふわりとおぼろげに舞う。きれいでもあり、はかないものだと俺は思う。
――…好きです、先輩
あの時、初めて告白をされた。
人の気持ちの真摯さをあれほど実感したことはなかい。
…今なら俺、何て答えるのかな。
**another story**
『SNOW』
329 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 09:50:42.02 ID:RNLP1A2SO
――ゲームセット! 18対12でVIP中学の勝利!
ホイッスルとともに勝利が高々と宣言される。
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( ゚∀゚)「っしゃああああああ!」
キャプテンの長岡の雄叫びとともにチーム全員が歓喜に叫んだ。
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( ゚∀゚)「おっぱいぃぃぃぃ! おっぱいぃぃぃ!」
喜びすぎて叫んでいる内容の気持ち悪さに気付いていない長岡。
331 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 09:55:58.81 ID:RNLP1A2SO
('A`)「おいやめれ。親御さん全員引いてるぞ」
観客席が凍り付いているのが分かる。
…相手チームなんか笑いを堪えて死にそうになってるじゃねえか。
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( ゚∀゚)「そんなの知るかボケェェェ! 三年最後の試合が勝利に終わったんだぜ! 心の底から叫ばなきゃ悲しいじゃねえかあああ」
ふたたびおっぱいコール。
最初はそれを遠巻きにしていた俺たちだが、そのうち長岡に合わせて叫びだし、はたまた腕を振るものまで続出。
結局最後には会場全体がおっぱいコール。
…どんだけだよ。
332 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 09:59:16.87 ID:RNLP1A2SO
――…
(=゚ω゚)ノシ「おっぱい! おっぱい!」
('A`)「おい、さすがに道路でやるのはやめろ。通行人に迷惑だ」
試合終了後、打ち上げは今日の九時に焼肉屋な! との長岡の叫び声とともにその場は解散となった。
家がそこそこ近い俺とぃょぅは、いつも通り二人で一緒に帰っていた。
333 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 10:03:21.07 ID:RNLP1A2SO
(=゚ω゚)ノ「先輩すごかったですょぅ! ぼく見とれちゃいましたょぅ! シュートする時の先輩のフォームの美しさ! 本当すごいですょぅ!」
興奮気味に話すぃょぅ。さっきから俺はほめられっぱなしだ。
(*'A`)「…何も出ねえぞ、そんなおだてたって」
照れ隠しにぶっきらぼうなことを言ってみる。
(=゚ω゚)ノ「本当のことを言ったまでですょぅ!」
…こいつは、純粋というかなんというか。
334 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 10:05:19.48 ID:RNLP1A2SO
('A`)「…そーかい」
(=゚ω゚)ノ「……、でも」
途端、ぃょぅの声音が低くなった。
(=゚ω゚)ノ「今日が先輩との最後の試合だなんて…悲しすぎますょぅ…」
目を伏せ、拗ねたように唇をとがらせるぃょぅ。長い睫毛が寂しげに揺れる。
337 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 10:08:53.06 ID:RNLP1A2SO
('A`)「確かに公式試合はこれで最後だが…、暇な時練習に付き合ってやるし、そんな悲しむことじゃないぞ?」
ぽんぽんと頭を撫でる。ぃょぅはくすぐったそうに笑った。
(=゚ω゚)ノ「それでも、やっぱ寂しいですょぅ…」
('A`)「…俺も、だ」
ふと、横にある公園が目に止まる。いつも試合のこととかチームのこととかを語り合った、馴染みの公園だ。
('A`)「ちょっと話すか」
俺とぃょぅは中に入っていった。
338 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 10:13:12.73 ID:RNLP1A2SO
――…
(=゚ω゚)ノ「先輩ブランコ乗りましょうょぅー」
(*'A`)「ば、バカヤロ! いい歳こいてブランコっておま!」
といいつつノリノリで漕ぐ俺。いや、ブランコ好きなんです。ツンデレとかそういう属性は俺にはないからな。
(=゚ω゚)ノ「うは! 先輩ブランコ上手ですょぅ!」
('A`)「うわ、全然嬉しくねえ」
キーコキーコと鉄が軋む音が聞こえる。
339 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 10:16:05.56 ID:RNLP1A2SO
(=゚ω゚)ノ「先輩、どこ高校受けるんですか?」
('A`)「VIP高校…かな」
今は十二月。もう受験は目前にある。
('A`)「近いし、レベルもちょうどだし…」
(=゚ω゚)ノ「VIP高校って長岡キャプテンも受けるらしいです」
('A`)「うわ、もし一緒になったらあいつと幼稚園からの付き合いになっちまう」
あはは、とぃょぅが笑った。
340 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 10:18:15.30 ID:RNLP1A2SO
(=゚ω゚)ノ「僕も…来年、VIP受けようかな」
('A`)「あー良いんじゃね? したらまたみんなでバスケ出来るな」
(=゚ω゚)ノ「はい!」
ぃょぅも俺の隣りでブランコを漕ぎ始めた。
十二月の寒い日、公園からは二つの軋む音。
341 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 10:21:39.79 ID:RNLP1A2SO
――プルル
('A`)「…メールか」
ブランコを一旦止まって携帯を取り出す。
('A`)ロ「見ていいか?」
(=゚ω゚)ノ「どうぞですょぅ。僕はブランコしてますょぅ」
メールはカーチャンから。
お祝いにケーキ買って来たから早く帰って来なさいとのことだ。
了解、と返信をする。
――この時、俺は気付かなかったのだ。
隣りから聞こえて来るはずの音が、消えていたことを。
342 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 10:23:04.96 ID:RNLP1A2SO
(=゚ω゚)ノ「…先輩」
('A`)「わり、ちょっとまtt」
(=゚ω゚)ノ「嫌だ…」
――刹那、俺はぃょぅに抱き締められた。
343 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 10:25:53.07 ID:RNLP1A2SO
('A`)「…っえ、…」
思わず立ち上がる。
ぃょぅは少し後ろへさがると、またも俺を包み込む、
(=゚ω゚)「先輩…あったけえ」
('A`)「お、おいお前!」
(=゚ω゚)「…どこも行かないでよ。……僕から離れないで」
('A`)「…」
言葉が出なかった。
344 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 10:28:12.80 ID:RNLP1A2SO
(=゚ω゚)ノ「先輩、先輩…」
うわごとのように俺を呼ぶぃょぅ。
だが、俺の意識は他のところにいた。
――回された腕の細さが、悲しいほど性別を主張するのだ。
ぃょぅは――…男。
自分を決めるのは自分だ。体の柔らかさも、当たる胸のふくらみも、そんなものぃょぅの決めたことの前にはどうってことない。
…だけど、でも。
そうやって認められない自分が最低に思えて、ぃょぅの腕をそっと振り解いた。
――これ以上中途半端では、いけない。
351 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 11:09:50.10 ID:RNLP1A2SO
('A`)「ぃょぅ、」
(=゚ω゚)「……」
('A`)「お前の気持ちには、多分応えられねえ…」
残酷なことを言っていると思う。それがぃょぅにどんな現実を突き付けるか、俺には分かっているのだろうか?
…自問自答は成立しなかった。不安だけ、胸に残る。
(=゚ω゚)「先輩」
353 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 11:11:07.63 ID:RNLP1A2SO
はっと顔を上げる。
濡れた瞳が俺を真っ直ぐ見つめていた。
(=゚ω゚)「僕は…、先輩に甘え過ぎなのかもしれませんょぅ…」
振り絞るかのように。静かに、ゆっくとぃょぅは話し始めた。不自然な抑揚がぃょぅが泣いているのだと聴覚に訴えかける。
(=゚ω゚)「…それでも、あの時僕を救ってくれたのは、絶対先輩だったカラ…」
354 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 11:12:35.28 ID:RNLP1A2SO
そっと、再び腰に腕が回される。ぃょぅの瞳はまだ俺を射抜いたまま。
――俺はどうするんだ?
(=゚ω゚)「ドクオ先輩…」
('A`)「…ぃょぅ」
声が掠れる。次にぃょぅが発する言葉が分かってしまった。
(=゚ω゚)「好きです、先輩」
――同時に、そのせつなさも。
355 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 11:13:32.76 ID:RNLP1A2SO
('A`)「ぃ…ょぅ…」
何と言えばいい? 何と返せば、ぃょぅの涙を見なくて済む?
――ぃょぅを泣かせたくないのなら、俺は…
(=゚ω゚)「先輩…偽善とかは…やめてくださいょぅ」
…心を見透かされたみたいだ。
確かに今のこの感情を偽善と言わずに何と言うのだろう。
真実を偽ってまで気持ちに応えるなんて、ぃょぅが一番悲しむ行為じゃないか。
356 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 11:14:29.11 ID:RNLP1A2SO
(=゚ω゚)「だめ…なんですね?」
俺はうつむく。その通りだ。俺はぃょぅに対して特別な感情は抱いていない。
――これからどうなるかはまだ分からないが。
(=゚ω゚)「――分かりましたょぅ」
ぃょぅの体が離れる。体に寒さが一気に流れ込んだ。
人の暖かさを、この時ほど感じたことはない。
357 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 11:15:23.98 ID:RNLP1A2SO
('A`)「ぃょぅ…」
顔を上げて、驚いた。
――ぃょぅは笑っていた。
それは弱々しくて、無理をしているともとれなくもなかったけれど。
確かにぃょぅは笑っていて。
(=゚ω゚)「ははっ…振られちゃいましたょぅ」
俺が気にしないようにって、無理してぃょぅは笑っているのか?
だとしたら、あまりにも悲しい。
('A`)「…笑うな」
358 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 11:19:38.77 ID:RNLP1A2SO
たどたどしく、言葉を紡いだ。
('A`)「その、振っておいて、言える言葉じゃねえけど……無理して笑うことは、ないと思うんだ」
(=゚ω゚)「無理、してなんか」
('A`)「悲しいなら、……泣けよ」
(=;ω;)「――っ…、先輩……」
ぃょぅは泣いた。声を上げて。
…俺はただ背中を叩いてあげることしか出来なかったけど。
これで良かったのか、と思った。
360 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 11:23:45.94 ID:RNLP1A2SO
――…
ぃょぅは泣きやみ、またいつもの調子に戻ったようだ。
ぺちゃくちゃと喋り出す。
(=゚ω゚)ノ「実は今日言おうってずっと決めてたんですょぅー? だから先輩が公園に誘ってくれた時はチャンスだなーって」
('A`)「そうかい」
(=゚ω゚)ノ「あ、これからもいつも通り接してくださいょぅ!! よそよそしい態度とかとったらラリアットしますからょぅ!!」
('A`)「…そりゃ、怖い」
その後打ち上げに一緒に行くことを一方的に約束され、俺たちはとりあえず家に帰ることにした。
361 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 11:26:58.88 ID:RNLP1A2SO
さよなら、またな、の流れをして、さあ帰るかという時に、
('A`) (=゚ω゚)ノ「 あ 」
――雪が降って来たのだ。
('A`)「うわ、まだ十二月なのに。気ィはえーなー」
(=゚ω゚)ノ「もう十二月ですょぅー うわー雪だ雪だょぅー」
はしゃぐぃょぅを置いてさっさと帰ることにした。
寒いのは嫌いだ。
391 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 15:56:42.87 ID:RNLP1A2SO
(=゚ω゚)ノ「先輩、ちょっと雪で遊びましょうよ」
振られておいてよくそんなことが言えるな。…って振った張本人が言えることではないが。
('A`)「やーだ。寒いのは嫌いだってお前も知ってんだろ」
(=゚ω゚)ノ「先輩ー」
('A`)「また打ち上げの時になー」
(=゚ω゚)ノ「先輩ー」
('A`)「………」
(=゚ω゚)ノ「せんぱーい」
ちょっと不憫になって振り返った。
('A`)「何だy――」
392 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 15:57:40.92 ID:RNLP1A2SO
――ぃょぅの、くちびる
394 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 16:00:01.97 ID:RNLP1A2SO
ちょ、不覚…じゃなくて、その、こいつは…
(;'A`)「ぃょぅ!!」
ヽ(=゚ω゚)ノ「やったー! 先輩のファーストキッスはぃょぅのものだょぅー!」
(;;'A`)「ばばばバーロー! ほっぺにチューはファーストキッスとかそんなんに入らん!!」
(=゚ω゚)ノ「えーキスはキスですょぅー!!」
397 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 16:07:09.35 ID:RNLP1A2SO
('A`)「もういい、話すの疲れた」
なんて、動揺を隠したいがための嘘なのだが。
(=゚ω゚)ノシ「ははっ、先輩またねー!」
('A`)ノシ
…普通に手を振ってしまう自分が情けない。
そのまま俺は家に帰ってひとっぷろ浴びて二次会へ。
ぃょぅは普通な態度で普通に接してくる。だから俺もフツーに話した。
――これで良かったんじゃないかな、と。
――…
再び帰り道。
今回は寄り道せずに帰ることに。
('A`)ノ「じゃあまた明日なー」
(=゚ω゚)ノシ「また明日ですょぅー」
もう夜も遅い。
雪はまだ降り続けていて、寒さも時が経つ度に増しているようだ。
399 :作者 ◆9qR5dPz92I :2007/02/12(月) 16:11:05.54 ID:RNLP1A2SO
雪、か。
俺は人を好きになったことがいまだにないから、恋がどういうものかわからねえけど。
こうやって、雪みたいに静かに積もっていくのが恋だとしたら
('A`)「なんか良いかもな」
なんて思ったりもする。
――…
それから時がすぎて、俺がVIP高校に無事合格したこと、暇な時に付き合った練習で足を怪我してバスケに対して恐怖を抱くようになったこと、ぃょぅまでVIP高校に入学してきたことは――
また別の話だったりもする。
-完-